英国では、基本的に地区の家庭医(GP)に登録することになっている。日本では大学病院でも、専門外来でも直接受診することができるが、英国ではまずGPを受診して、必要があると判断された場合は、GPから専門医に紹介するシステムとなっている。GPを含め公的病院(NHS:National Health Service)は、診察代、薬代を含めて全て無料である。
頭痛に関しても、すべてまずGPが治療を行う。英国ではGPはもともとGPになるための教育をうけており、基本的な疾患については内科、外科、小児科、産婦人科、皮膚科などの領域にかかわらず比較的高いレベルで診療している。頭痛に関してもGPがかなり高いレベルで基本的な治療がなされているようだ。
必要があれば頭痛外来に紹介状を書いてもらいWaiting Listにのることになる。このWaiting Listがかなり長く、公的病院の頭痛外来は初診までに12ヵ月から18ヵ月!も待つという。一度受診すると次の再診は数ヶ月後で、それまでの間は専門医の指示にしたがい、GPが定期的にフォローする。
このようなシステムのため、頭痛専門医が忙殺されることなく、一人あたり30分ほどかけてじっくりと診察をしている。患者の満足度も高いようだ。また、通常の片頭痛や薬物乱用頭痛などは基本的に来院することはなく、慢性群発頭痛、SUNCT/SUNA、家族性片麻痺性片頭痛、脳底型片頭痛、新規発症持続性連日性頭痛、持続性片側頭痛、慢性片頭痛などで、なかなか改善しない頭痛のみである。
頭痛専門医が本当に難治性の頭痛のみに、充分な時間をかけて診察している環境は理想的だと感じた。一方で、GPからNHSの頭痛専門医へ紹介するというルート以外に、プライベートの頭痛クリニックを受診するという方法がある。この場合、クリニックにもよるが数週間後には予約がとれるそうだ。NHS病院の頭痛クリニックが難治性頭痛に限られているのに対して、プライベートクリニックは診察代が高額であるが、通常の片頭痛の患者さんもいるとのことである。
日本の良い面と悪い面、英国の良い面と悪い面、それぞれを見ることができたのは良い経験であると思う。